歌舞伎の底力

令和元年度文化交流使(長期派遣型)
中村 京蔵
歌舞伎俳優
  • 派遣国:アメリカ、キューバ、メキシコ
  • 活動期間:2019年11月5日~12月4日

この度、文化交流使として歌舞伎が派遣されるのは初めてで、派遣先はアメリカ(サンフランシスコ・ロサンゼルス・ミシガン)→メキシコ→キューバ。私はこれまで30か国50都市ほど海外で歌舞伎をご紹介する仕事に携わって来ましたので、アメリカとメキシコは経験がありますが、キューバは初の歌舞伎公演なので、責任も重く戦々恐々でした。幸い早稲田大学の児玉教授と松竹の協力が得られましたので、俳優は私女方ひとりの小規模編成にもかかわらず、歌舞伎の魅力を伝える最低限の形を整えることができました。
内容は女方に特化したレクデモとし、全体で90分強。まず、私の『藤娘』で女方の美、衣裳の引き抜き(早替わり)をご覧に入れ、次に児玉教授による映像を使った「歌舞伎とは何か」というレクチャー、引き続き、私が女方の基本を実演を交えてレクチャーし、さらに児玉教授のレクチャーその2があり、最後に私が『石橋(しゃっきょう)』で獅子の狂い(毛振り)をご覧に入れました。また、文化庁さんからの要請で各現地文化とのコラボを実施。カーテンコールにおいて、ローカルミュージックで獅子の毛振りをお目に掛けました。客席の皆さんは一様にビックリしたらしく、どこも大いに盛り上がりました!また女方のレクチャーで、感情表現( 泣く・笑う)を客席を交えた参加型にしたところ、観客の皆さんは各地とも実に積極的に体験してくださり大変喜ばれました!

キューバ公演『石橋』

さらに、歌舞伎は畏まって静かに観るものではなく、いいな!面白いな!と感じたら拍手や掛け声を遠慮なく掛けてくださいと通訳さんを通してレクチャーしたところ、各地とも皆さんノリノリで掛け声を掛けてくださり、楽しんで観てくださっていることを実感いたしました。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校公演の女方のレクチャー

ミシガン大学では、歌舞伎の中の男女の愛の描き方をテーマに60分ほど講演し、またキューバでは、国立芸術大学の学生さんと意見交換会がありましたが、今回の公演を熱心に詳しく観ておられて、他国の文化に対する深い理解を感じました。
ほんの一端ですが、歌舞伎の魅力をお伝えできたと自負しています。そして、各地から再来を希望する声が多々届いておりますことは、文化交流使としてこの上ない喜びです。それはとりもなおさず、先人達が築き上げて来た歌舞伎の底力のお蔭に外なりません。今回もそれを痛感した次第です。

ミシガン大学での講演

メキシコ公演終演後の記念撮影

中村 京蔵 プロフィール