進化する折り紙の文化

令和元年度文化交流使(長期派遣型)
三谷 純
筑波大学 教授
  • 派遣国:中国、フィリピン、マレーシア、バングラデシュ、インド、タイ、ミャンマー、ベトナム
  • 活動期間:2019年10月27日~12月22日

我が国の伝統的な文化の一つである「折り紙」を通して、アジア8 か国で文化交流活動を行ってきました。
私は、これまでに曲面を持つ折り紙の設計や制作を通して、折り紙の新しい分野の開拓に注力してきましたが、そもそもはコンピュータサイエンス分野の大学教員です。そのため訪問先での活動は、講演とワークショップおよび作品展示が主なものとなりました。

ワークショップでは和紙で折り鶴を作ったり、丸い形を1枚の紙から作る体験をしてもらいました

講演では、折り紙の歴史と工学分野での応用の話、そして折り紙設計の話などをしました。訪問先の大学や高校、美術館などでは、多くの方が折り紙の新しい可能性に興味を持ち、たくさんの質問をしてくれました。ワークショップでは、伝承的な折り鶴の作成とともに、曲線折り紙の体験をしてもらいました。ほとんどの参加者が折り鶴は知っていても、曲線で折る折り紙は初めてということで、和気あいあいと楽しんでくれました。

講義風景。大学などでは、1枚の紙から作ることができる立体の幾何的な条件なども説明しました

しかしながら、活動を始めたばかりのころは、私のようなものが文化交流使を引き受けてよいのか、という葛藤がありました。私よりも経験豊富で、折り紙についても詳しい適任者がいるのではないかと思ったのです。それでもしばらくすると、私が引き受けてよかった、と思えるような新しい気付きがありました。折り紙は、現在まさに進化の過程にある文化だということです。
もちろん、文化は時代とともに変化するものですが、折り紙は今、驚くほどの早さで変化し、進化しています。1980 年代に「折り紙を設計する」というアイデアと技法が生み出されてからは、それまでと次元の違う複雑で斬新な折り紙の世界が登場しました。そしてそれはインターネットの普及とともに世界中に広がりました。現在では、世界各地で折り紙のコミュニティが作られ、互いに技を競い合っています。それでもなお日本の折り紙は、そのレベルの高さや層の厚さで一目置かれています。だからこそ、従来の概念にとらわれない、数学やコンピュータを駆使した、変で新しい折り紙を、今の日本の折り紙の一例として紹介することは、きっと意味があるのだろうと思うようになりました。

ワークショップの後はみんな笑顔になります(タイ・ウドンターニーにて)

この事業を通し、多くのことを学び、得難い経験をしました。反省する点も多々あるのですが、できることを精いっぱいやり切った満足感を持っています。期間中、活動を支えてくださった多くの方々に、心より感謝いたします。

三谷 純 プロフィール